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きゅうぶんにほんばし

旧聞日本橋

長谷川 時雨

25 渡りきらぬ橋

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,172 字 · 36 页

青空文庫

ほんとは、もっと早く奉公に出されぬ前、祖母が死ぬと直きに、弟をねんねでおんぶした仲働きが、人形町までといって出た、あたしの買いものの供に付けて出されたが、この女中は二十歳を越していて、何かよくわかったから、却って道案内をしてくれて、神田小川町の竹柏園の門に立ったことがあったのだ。まだお若かった佐佐木信綱先生と、新婚早々の雪子夫人は、その時、花簪を※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)した、ちりめんの前かけをしめていた、あたしの姿を今でも時々おっしゃる。

さて、入門したといっても、こっちがしたつもりだけで、実のところ、束脩もおさめたやら、どうやら、福島の人で、あたしたち姉妹を可愛がってくれた、あまり裕福でない、出入りの夫婦にたのんで、榛原で買った短冊に、しのぶ摺りを摺ってもらいにやって、それが出来て来たのを、十枚ばかりおみやげに持っていったのが、ありったけの心持ちだったのだ。ずっと帰って来てからは、大胆になって、かまわずに稽古日には朝から出かけた。もとより本はないから、先生のうちの玄関の、欄間までギッシリ積んである本箱の上から出して頂くのだった。