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そうしゅん
早春
豊島 与志雄
「苦楽」1947(昭和22)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,457 字 · 20 页
頭髪を長く伸ばし、ホームスパンの背広を着こんだ、顔の蒼白い好男子だった。
北川さんは鍬を探しに、おれまで物置小屋へ引っぱってゆき、声をひそめて手短かに話した。
「実は、弱ってるんだよ。」
――あの青年は、竹中貞夫といって、知らない間柄ではない。彼から頼まれたということで、一昨日、運搬屋が梅の木を持ちこんできた。そして昨日、彼自身やって来た。北川さんの妹の梅子に、梅の木を贈る約束をしたから、それを果すんだと言う。梅子に聞けば、そんな約束は覚えがないと言う。それでも竹中は約束したと言い張り、あの木を庭に植えるまでは帰らないと、腰を落着けてしまった。とうとう昨夜は泊りこんだ。今朝になると、早く梅の木を植えようと催促する。父や母も来ることになってるから、あの木がここに植えられたのを見たら、喜ぶだろうと言う。ほんとに両親とも来ることになってると言う。
「そんな筈はない。」と北川さんは言った。「少し気がへんじゃないかと思うよ。」
おれには話がよく分らなかった。もっと詳しい関係を聞いてみた。
――竹中のうちは資産家で、昔、北川さんの父がたいへん世話になったことがある。