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わせだかぐらざか
早稲田神楽坂
加能 作次郎
「東京日日新聞」1927(昭和2)年6月11日~29日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,407 字 · 46 页
んだ。少し範囲の狭いのが物足りないけれど、その代り二度も三度も同じ場所を行ったり来たりしながら、それこそ面白くもないバナナのたたき売を面白そうに立ち止って見ていたり、珍しくもない蝮屋の講釈や救世軍の説教などを物珍しそうに聞いたり、標札屋が標札を書いているのを感心しながらいつまでもぼんやり眺めていたり、馬鹿々々しいと思いながらも五目並べ屋の前にかがんで一寸悪戯をやって見たりすることも出来るといったようなわけだ。僕は時とすると今川焼屋が暑いのに汗を垂らしながら今川焼を焼いているのを、じっと感心しながら見ていることさえあるよ。まあ、そう笑い給うな、兎に角そんな風な呑ん気な、殆ど無我的な気分になれる所は、神楽坂の外にはそう沢山ないよ。外の場所では兎に角、神楽坂ではそんなことをやっていても、ちょっとも不調和な感じがしないんだ。そしてその間には、友達にも出会ったり、ちょっと美しい女も見られるというものだ。アハハハ。』
『ああそれ/\』と友達も一緒に笑った。『ところで色々とお説教を聞かされたが、これから一つ実地にその神楽坂気分を味わいに出かけるかね。』
『よかろう。