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わせだかぐらざか
早稲田神楽坂
加能 作次郎
「東京日日新聞」1927(昭和2)年6月11日~29日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,407 字 · 46 页
見るもじじむさい胡魔塩に化してしまった。
『随分お白いのがふえましたね』
『ううむ、この頃急に白くなっちゃった。まだそんな年でもないんだけれど……』
『矢張り白髪のたちなんですね、よくこういうお方がありますよ』
『何だか知らないが、実際悲観してしまうね』
大分以前、まだそこの主人が職人達と同様に鋏を持っていた頃、ある日私の髪を刈り込んでいる時、二人はそんな会話を取りかわした。見ると併しそういう主人自身の頭も、いつかしらその頂辺が薄く円くはげているのだった。
『君も随分変ったね』
私はもう少しでそういおうとした。主人も今はもう五十に間もない年頃で、むしろ背の低い、まる/\と肥えた、極く鷹揚な、見た眼にも温良そうな男であるが……変ったのはかれや私の頭髪ばかりではない、それの店の内部も外観も、殆ど昔のおもかげを止めない位に変ってしまった。何時どこが何うなったということはいえないが、何度か普請をやり直して、外観もよくなったと同時に、内部もずっと広くなり綺麗にもなり、すべての設備も段々とよくなった。散髪料にしても、二十銭か二十五銭位であったのが、今はその三倍にも四倍にもなった。