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はやみみさんじとりものききがき

早耳三次捕物聞書

林 不忘

04 海へ帰る女

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,707 字 · 12 页

青空文庫

夜になるのを待って、女にいわれたとおりに家族は全部親類へ預け、召使いにも一人残らず一晩の暇をやって、これも女と約束したことだが、広い家の隅々にまで百目蝋燭を立てつらねて、ひとりつくねんと待っていると――風が出たか、古い椽がみしと鳴ったりしてなんとも物凄いようだ。

昼のうちから用意した竜神の好きそうな物をそれへ並べて、酒の燗もできている。退屈だし恐いから、爺さんお先に手酌でちびちびやっていた。

と、刻限。表の戸が細目にあいて、いつもの白衣の女がはいって来た。背後を向いてさし招いている。

さてはいよいよ竜神のお成り。おやじは上り框に平伏した。足音がして誰か眼の前に立ったようす。

おそるおそる頭をもたげた主人、一眼見るよりあっと叫んだというが無理もない。

赤くなった黒木綿の紋付にがんどう頭巾、お約束の浪人姿が、どきどきするような長い刀を引っこ抜いて立っている。女はにっとして戸をしめると、

「お爺さん、びっくりさせてすまないねえ。じたばたすると危ないよ。わたしの竜神はちっとばかり気が短いんだから、ほほほ。」

という挨拶で、あとは造作もない。おやじが口へ手拭を押こまれて、菰で簀巻にされてふるえているあいだに、竜神とその使女はどこからどこまで家捜しして、あくる朝、家族と店の連中が帰ってきた時には、現金はもちろん金目の