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あすのちせい

明日の知性

宮本 百合子

「女性改造」1947(昭和22)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,225 字 · 13 页

青空文庫

去年の春ごろ、内山敏氏が、ある雑誌にトーマス・マンの長女のエリカ・マンが、弟のクラウス・マンと共著した「生への逃亡」について、エリカ・マンの活動を紹介しておられた。この短い伝記は、感銘のふかいものであった。知識階級の若い聰明な女性が、そのすこやかな肉体のあらゆる精力と、精神の活力の全幅をかたむけて、兇暴なナチズムに対して人間の理性の明るさをまもり、民主精神をまもったはたらきぶりは、私たち日本の知識階級の女性に、自分たちの生の可能について考えさせる多くのものをもっているとおもう。

トーマス・マンというドイツの民主的精神をもつ作家の名は、日本にもよく知られている。「ブッテン・ブーローク」や「魔の山」「ロッテかえりぬ」などは翻訳でひろくよまれている。マンには六人の子供たちがある。長女エリカ・マン。そのつぎのクラウス・マン。この人は反ナチ作家で、ヒトラーが政権を確立させてからはオランダで、『ザンムルング』という反ナチの文学雑誌を発行していた。ロシアの作曲家チャイコフスキーを題材とした「悲愴交響曲」という作品がある。二男は歴史家であるゴロ・マン。次女モニカはハンガリーの美術史家の妻。