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めいあん
明暗
岡本 かの子
「むらさき」1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,887 字 · 12 页
しかも、三木雄の智性や熱情は如何にも品格と密度を備えていた。智子の最初の片輪に対する同情は追い追い三木雄への尊敬と変り、三木雄の暗黒世界を開拓する苦労を智子は悦楽にさえ感じて来た。
海は蒼く、空も、そして梅は白く、椿は紅い。
まず、熱海でこれを智子は一心に三木雄に教えた。
海は蒼く空も
そして梅は白く
椿、くれない
三木雄は詩のような口調でそれを繰り返すようになった。
武蔵野へ帰って来てから二月の末に大雪が降った。「積雪皓々とは雪が真白くということなの、雪はただ白いのよ、そら熱海の梅とおんなじに白いのよ、けど積るとそれが白いままに光るのよ。」
白いいろ、白いものはただ無限。白ばら、白百合、白壁、白鳥。紅いものには紅百合、紅ばら、紅珊瑚、紅焔、紅茸、紅生姜――青い青葉、青い虫、黄いろい菜の花、山吹の花。
こう愛情で心身の撫育を添え労りながら、智子の教え込む色別を三木雄は言葉の上では驚くべき速度で覚えて行った。そればかりでなく、三木雄は次ぎの未知の世界への好奇心から、子供が菓子をでもねだるように智子の教唆をねだり続けるのであった。智子は、そういう性格の表れに、三木雄の執拗な方面をも知り得るのであった。