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めいじのごじゅっせんぎんか
明治の五十銭銀貨
服部 之総
「社会労働研究 創刊号」1954(昭和29)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,448 字 · 15 页
その結果ほんとうに苦しんだ者は人民であった。会津贋金がもたらした悪性インフレは、領内はいうまでもないが、ひろく信越関東にまたがる「世なおし一揆」を元年、二年にわたって激発させている。贋貨を正貨に引換えることを人民が要求するのは、旧藩の権利義務のいっさいが名目(版籍奉還)だけでも新政府に引きつがれたいまとなっては、なおさら正当であるだろう。
だが、外国公使がそれを要求するのは、正当であったか? 明治政府が濫造した一分銀が贋貨にちかいものだったにせよ、れいの「同種同量」の条約文が生きているかぎり一分銀三百十一個をもって米ドルなりメキシコドルなり香港ドルなり、精粗さまざまの外国銀貨一ドルと引換えられる権利(※(感嘆符疑問符、1-8-78))があろう。すくなくとも、文句をつけられる条約上の理由はないのである。
小判買いで儲かったあいだはだまってこの条約をおしつけておいて、もう小判が日本中にはなくなってしまった――あるにしても三井や鴻ノ池や大大名の金蔵の奥ふかく死蔵されてしまった今日となって、銀貨の品質に文句をつけて「贋貨」というのは居直り強盗というものである。