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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

12 その十一 稲妻は見たり

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,240 字 · 52 页

青空文庫

また土ビンに水をいれて湯呑みを添えて枕元へおいた。

三枝子が以上のことを果したことがなぜ判るかというと、三枝子が各部屋の雨戸をしめるために立上ったとき、当吉がフトンの中から声だけだして、門をしめることをたのみ、ラクは由也の寝床のことをたのんだ。これは両者の果すべき役割で、この家のサムライ気質のせいか、由也の寝床の始末だけは若い女中がやらずにラクがやる。

さて三枝子が頼まれたことを果して戻ってくると、当吉はフトンのフタをあけずに、クグリ戸のカンヌキはかけずにおいたかと確かめたし、ラクは机上の燭台のことと枕元の水のことを確かめ、由也はまだ戻らないことも確かめた。

いよいよゴロゴロが頭上にせまってきた。ピンピンキーンとはりさけるような落雷音。天地はわれる思い。由也が帰宅したのはそのさなかである。三枝子が「ハイ」と叫んで立上ったようだから、オソノが、

「なアに?」

フトンのフタをあけずにこうきいた。オソノだけが質問したのは、まだしも彼女が一番生色が残っていたせいらしい。

「お帰りのようだわ。今、そこでお手が鳴ったの」

三枝子はこう答えて去った。お手が鳴ったというが、雨戸をうつ豪雨の物すごい音のさなかではあるしフトンのフタをシッカと閉じた三名にはそのお手の音がきこえなかったが、三枝子はそこでお手が鳴ったという。