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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

16 その十五 赤罠

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,372 字 · 67 页

青空文庫

美人薄命というが、オレがキリョウ好みをしたのが思えば失敗のモトであろう。若い頃は分別が至らないから、目先の快楽に盲いて、老後も死後も考えないが、家を保つには丈夫で利口な嫁を選ばなければいけないものだ。その上キリョウが良ければ越したことはないが、それは二の次だ」

不破喜兵衛はこう考えて、まだ清作が二十という若いときに、今の嫁をもたせた。そのときチヨは十六という若い嫁であった。

幸いに玉之助、信作という二人の孫は母の健康をうけついで無病息災に育つから、喜兵衛も非常に安堵していた。と、去年の秋の季節に、大事な二人の孫がまちがえて毒茸を食し、一夜にそろって死んでしまった。

豪放な喜兵衛旦那もさすがに一時は寝食を忘れるほどの悲歎にくれたのである。しかし冷静に考えれば希望がなくなったわけではない。長命の望みなしと二十で嫁をもたせた清作は案外にも長持ちして、すでに三十であるが、まだ何年かは持ちそうだ。現に二人の孫を失うと殆ど同時に、あたかもそれを取りかえすようにチヨは妊娠してくれた。死んだ孫の数を取りかえすのも儚い希望ではなかろう。

そこで喜兵衛は心機一転、年が改ると共に自分の誕生日がくるから、ちょうど還暦に当るを幸い、厄払い、縁起直しに思いついたのが生きた葬式である。