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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
16 その十五 赤罠
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,372 字 · 67 页
洋服のヒゲ紳士は花廼屋、珍しや紋服姿の虎之介。この二人がなんとなくシサイありげに同じ目的地へ向っているのである。花廼屋は野づらを吹く左右の風を嗅ぎとって、
「フム、近づくにしたがって、次第に匂うなア。神仏混合ハナの屋通人という通り、ハナが利くことではハナの長兵衛に劣らぬ生れつきだて。このハナが嗅ぎわけたところでは、もはや疑うところがない。今日は誰か殺される人があるぜ。一人かい? フム、フム。二人かい? フム、フム」
いつもならば必ず反撃の一矢を報いる虎之介が、花廼屋の言葉も耳につかぬていに沈々と思い余った様子に見えるのは、甚しく同憂の至りであることを表している。にわかに煩悶の堰が切れたらしく、
「ウム。ひょッとすると、三人か。チヨ女のおナカの子を加えると四人……」
物騒な計算をしている。が、これにはシサイがあったのである。
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田舎育ちの通人が都風の粋な情緒に特にあこがれを寄せるのは理のあるところで、花廼屋は大そうな為永春水ファン。深川木場は「梅ごよみ」の聖地、羽織芸者は花廼屋のマドンナのようなものだ。そこで折にふれてこの地に杖をひき、すすんで木場の旦那にも交りをもとめて、文事に趣味もある喜兵衛とはかねてなにがしの交誼をもっている。