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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
16 その十五 赤罠
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,372 字 · 67 页
なぜなら中はカラだから出る人はある筈がなく、したがって、中へはいる方が不可能となった……」
こう云って新十郎は微笑して、
「さッきから錠がおろされたまま、誰もあそこに近づいた者の姿はありません。また、床も羽目も屋根も蟻の出入の隙もなく念を入れて二重張りに密閉されていますから、誰も中へ入ることはできない筈なのですよ。この構造を自分の手でつくったコマ五郎一家の人々は誰よりもよくそれを知っていました。ユーレイでなければ中へ入ることはできないのです」
「そうか。わかった!」
ヤマ甚は叫んだ。
「年寄の坊主が走って行きましたね。それにつづいて、三四名の坊主と十名あまりの火消人足が追っかけて駈け登って、扉が倒れたなア。あのとき中へ誰かが入ったのだな」
「そうでしょうか」
新十郎は微笑して、
「二枚の扉は錠のおろされたまま外れて、棺桶の上へ倒れたのです。そして、そのあとで室内に人の姿が見えたことはありませんでした。しかるに全てが焼け落ちると、焼跡の中央に、そして、たしかに棺桶の位置に、焼死体がありました」
「そうか! すると縁の下に、ちょうど棺桶の位置の下にすでに死体が隠されていたのですね。