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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

17 その十六 家族は六人・目一ツ半

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,745 字 · 44 页

青空文庫

「火は近いようだが、お前のウチは遠いのかい」

「いえ、遠かないね」

「落ちついてやがるな」

「火事にアンマが慌てたって仕様がないよ」

「なるほど。それにしても、人情で慌てそうなものじゃないか」

「焼ける物を持たない奴は慌てないよ。チョイと慌てる身分になりたいやね」

そこへこの商人宿の女中がかけこんで、

「弁内さん。火事はアンタのウチの近所らしいよ」

「そうかい。それなら、ここのウチでゆっくり一服しなきゃアいけない。うっかり目アキに突き当られちゃアかなわないからな」

「オレが見てきてやろう」

仁助は立上り、女中からアンマ宿の所在をたしかめて、火事見物にでかけた。

★

幸い風のない晩だから三四軒焼きこがして食いとめた。アンマ宿は通りを一ツ距てていたので、近火だったが、被害はない。

弁内はヤジ馬や火消が退散して、深夜の静けさに戻るまで油をうって帰ってくると、オカネが銀一とお志乃に当りちらしている最中だった。

「ここんちじゃア人間の頭は六ツだが、目の玉は一ツ半しかないんだよ。その一ツはお志乃の顔についてるんだ。家財道具を運びだすにも、メクラどもの世話をやくにも、その目玉がタヨリじゃないか。