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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

19 その十八 踊る時計

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,713 字 · 54 页

青空文庫

十五分すぎた。ナミ子は柱時計を見ていたのだ。やがて二人はそろって病室から退出した。ヤレヤレ、これで用がすんだと、大伍が出てきてドアを閉じたと思うと病室のオルゴールが鳴った。「来い」という合図のオルゴールだ。大伍はとって返したが、一分もかからぬうちに戻ってきた。

「さて、用がすんだ。ナミはお連れした道を通って、伊助さんをお送りしてあげるがよい。庭木戸から出て塀に沿うて門まで、アベコベに一通りやりなさい。来るが如くに去る。去るところを知らずかね。伊助さん。ゴキゲンよう」

伊助は無言で頭を一つペコンと下げただけだ。重い荷を背負って歩きだした。まったく来た時も去る時も、伊助は同じであった。重い顔、無言、そしてテクテク歩いてる。

「織物を買っていただいたんですか」

思いついたことを訊いてみると、

「そうだ」

と答えただけだった。彼の方から一度こう訊いた。

「旦那の病気は何だね。ウミの匂いがプンプンする」

「オヘソのあたりや腰や股に銅貨ほどもある孔がいくつもあいて、絶え間なしにウミがにじみでているんですッて。ウミの匂いが強くなると香水をまくんだけど、今日は香水をまいてないのね」