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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

19 その十八 踊る時計

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,713 字 · 54 页

青空文庫

ナミ子は大伍の部屋へカギを借りに走って行った。部屋には寝床が敷きッぱなしてあって今まで寝ていた様子だが、彼もまた十時にねても十一時には目がさめざるを得ない習性に負けたのかも知れぬ。

中年まで概ね浮浪生活の大伍は三度や五度は女と同棲したかも知れぬが、キチンとした女房らしいものは一人もいなくて、目下は悠々独身であった。

人々にきいてまわると、大伍は十分ほど前に壮士のステッキをふりまわして散歩にでかけたそうだ。

こうなっては遠慮していられないから、成子の部屋へ行って、ゆり起した。

「申訳けありません。オルゴールが鳴ってるのにカギがなくてはいれないのです。いつもの小卓の上に置いて下さったのでしょうね」

「ええ、そうよ」

成子はムッツリ答えた。成子は機械と同じように習慣的に行為する人であった。たとえば勤務を終って出るとき肩を並べて一しょにドアをくぐっても、ハイ、と云ってカギを手渡さずに、小卓の上へ黙ってカギを置いて行く人であった。そして、その習慣を忘れることが考えられない人であった。

「カギがなくなったの?」

成子の目の色は深かった。彼女も何か思い当ったような目の色だった。