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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
13 その十二 愚妖
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,839 字 · 55 页
また逃げようとする人影を認めて捕えると、それはナガレ目であった。屍体は誰だか分らなかった。
「オレは何も知らんぞ」
と、ナガレ目は言い張った。
屍体は牛の角に二度突き刺されて殺されたらしい。ほかに傷はないから、犯人は牛であるらしい。ナガレ目は牛をつないだ所から遠く離れて木を伐っていた。仕事中は、突然人が来ても分らぬ場所に牛を隠してつないでおく。彼は深夜山中に入り、日中働いて深夜帰る。そういう秘密の生活を一年ちかくつづけていたが、村で唯一人の炭焼きを副業にしていたから、不規則な生活も人に怪しまれることがなかった。
菅谷巡査も捜査隊に加わっていたから、本署の手にうつる前にフシギな屍体を改めた。
妙なことにはガマ六と同じように、これもゾロリとした着流しにワラジをはいている。またガマ六と同じように所持品が一ツも見当らない。目玉は二ツともチャンと顔についているが右の腕が肩もヒジも骨折している。牛と格闘したのであろう。二ツの角で二度つかれたから四ツの突かれた傷があるが、その傷は胸から腹まで四ヶ所、正面から突かれているが、上下に四ツ並んでいる。
直立の姿勢で牛に突かれれば胸や腹に二ツずつ平行した傷がつく筈である。