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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

13 その十二 愚妖

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,839 字 · 55 页

青空文庫

もしていないし、陰のある生活もしていない。オタツはカモ七が好きなのだ。こういう世に稀れな力持ちの大女は小男で働きのないカモ七のようなバカな能ナシが好きと見えて、カモ七が十九、オタツが十七の年に両名相談の上、オタツはカモ七の親のところへ、カモ七はオタツの親のところへ二人の結婚の承諾を求めに行った。

カモ七はオタツの父にいきなり飲みかけのお茶をぶッかけられた。するとカモ七は、

「お茶をぶッかけたのはオレとオタツを祝ってくれたのか。オレはお茶だと思うが、しかしお前は白湯をのんでいたのかも知れないな。いまオレにかけたのはお茶だろうか白湯だろうか、どっちの方だ」

云い終らないうちに火吹竹で十あまり殴られて戸外へ投げとばされてノビてしまった。

オタツの方はカモ七の母親に散々からかわれ、おまけに野良帰りの足を洗っていたカモ七の父に足を洗った水をぶッかけられたので、オタツは赤々とふくれ上って、近くにあった火吹竹を一握りするやカモ七の親父の頭を十あまりぶッて、ノビたのを近所のタンボまで運んで投げこみ、その頭から肥をかけた。

村の者が相談の結果、二人風変りの恋人を一しょにさせて、遠い山腹の痩せ地を与えたが、オタツは力に物を云わせ木をぬき肥料をかつぎあげ、立派な畑にしあげて村人をアッと云わせ、二人の生活は至って平和であった。