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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
18 その十七 狼大明神
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,208 字 · 52 页
天狗の顔で都大路が歩けるかい」
「天狗の顔?」
「ハッハッハ。オーカミイナリの神官は世にも珍しい天狗の顔つきなのさ。代々天狗の顔だそうだよ」
父の話は奇怪であったが、心配の種になるような言葉はなかった。由利子はひとまず安心した。父の食事を下げたのは十一時ごろであった。
父は一風呂あびた。その間に由利子が雨戸を閉じて寝床をしいた。十一時半ごろお手がなったので、由利子が父の寝間へ行くと、熱いお茶を一パイ所望し、ランプを消してアンドンをつけさせた。父は小用が近いので、灯りがいつも必要であった。
父の用を果して、由利子が自室にくつろぎ、寝床について間もなく柱時計が十二時を打った。そのころまでは、蛭川真弓は生きていた筈であった。
翌朝、寝床を血の海にして死んでいる真弓の姿が発見された。
弓の矢が心臓を射ぬいていた。そして死んだ顔には、天狗のような鼻の高い目玉の大きな面がかぶされていた。猿田彦の面のようなものであった。
発見者は由利子であったが、彼女の報らせで兄とともに駈けつけた川根は兄と妹がそこにいることを忘れたように、一足一足ふるえつつ退いて、叫んだ。
「オーカミイナリだ! あれと同じだ! 神の矢で一うちに殺されている! 猿田の面をかぶされている! あのタタリが十五年間、まだとけていなかったのだ」