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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

18 その十七 狼大明神

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,208 字 · 52 页

青空文庫

廊下の戸は父の側からは錠をかけることができるが、今まで錠をおろした習慣はないし、その朝も錠はおろされていなかった。

廊下のこッちは中庭に面して由利子の部屋があり、階段を登ると久雄の部屋があった。由利子の部屋の隣室に四人の女中が眠り、その向うに台所や湯殿がある。他は階上階下ともに空屋である。台所用の土蔵も附属していた。

さらに一ツの中庭をはさんで店がある。店の土蔵が二ツあった。六人の小僧や手代が土蔵の入口の一部屋にザコ寝していた。

店と母屋の廊下は戸でしきられ、この戸は由利子が寝る前に必ず錠を改めた。店の男たちと母屋の女たちの境界をまもるのは、母なき後は由利子の責任の一ツであった。その晩も寝る前に改めた。錠はおろされていた。

翌朝六時の定刻に起きた早番の女中オタツが七時ごろ廊下の戸の錠をはずした。錠はまちがいなくかかっていた。

店からの侵入はこの戸にさえぎられて不可能であり、母屋全体の戸締りにも異常はなかった。すると、侵入口が問題であった。

新十郎は離れの各部屋、その押入や便所も改めた。土蔵の錠は常におろされている。便所の汲取口にも異常はない。

由利子の申し立てによると、彼女が父の食事をさげているとき(女中たちは先にやすませた)同時に父が入浴に立ったので、彼女がまだ雨戸を締めぬうちに、離れが無人になった