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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
18 その十七 狼大明神
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,208 字 · 52 页
なんとなく警戒している様子であった。
「むかし神の矢で殺された男があった。大神様のミササギの中で殺されていたな。十一月十五日の例祭にオレは山上の社殿の前から八方に向って三十本の神の矢を放す。その神の矢がどこへ飛び去っていつ何者を射殺すか、それは神霊のお心である。神の矢の行方はオレには分らないな」
天狗は数の知れた信者とつきあうだけで世間知らずの筈だが、非常に世故にたけた悪者の目に見られるような狡猾な智恵が宿っているように思われた。
「十一月十五日のほかの日に神の矢を射ることはありませんか」
「射ることはできない。三十本の神の矢はちょうどまる一年かかって出来あがるような定まった工程がある。それよりも多くも少くも造ることができないから、神事に用いる三十本の神の矢以外に余分のものは残らないようになっている」
「一度神事に用いた弓の矢を拾って射ることはありませんか」
「古来山上の神殿前から射出した神の矢はその姿を失うものとされている。真夜中に射る。神の矢の飛び去る姿はオレにすらも見ることはできない」
「今日までに本年度の神の矢が何本造られておりますか」
「十一本できている。