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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
18 その十七 狼大明神
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,208 字 · 52 页
虎之介がいらだたしげに言った。新十郎は首をふって、
「とんでもない。私が神の矢と面を盗んだだけなら、盗んだことが誰にも分る筈がないではありませんか。あの自信たっぷりの妙な天狗は矢の数を改めてみる筈はないし、面の数はほとんど無数ですからね。彼が置き手紙を残して逃げた理由は、ほら、これですよ」
彼は小屋をでて戸を閉じてから、その戸の一点をさした。そこに何かの傷跡があった。
「私が盗みだした神の矢は二本です。そして、一本は、私が力一パイ投げつけてこの戸に突き刺して戻ってきたのです。さて、それでは伊之吉君のお説によって、加治さんの話をきいてみようではありませんか」
一同は加治の小屋を訪れた。新十郎が東京に起った神の矢殺人事件をのべて、伊之吉が残して去った手紙を見せると、老人は読み終って、なんとなく意外の顔だった。
「そうでしたなア。私の小屋が風で倒れた晩に彼の小屋に泊めてもらって語り合ったことはありましたよ。すっかり忘れていましたね。しかし私は別にあの男の父を殺した犯人の手がかりなぞを語ったとは思われないが、この手紙にあるように、土蔵破りの犯人が残して行った品であるとすれば、それは古ぼけた背負い籠ですよ。