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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
18 その十七 狼大明神
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,208 字 · 52 页
「そうだっけ。この扉が両側に一パイに開いていたのよ。三四日お詣りしないけど、この前の時は扉は閉じてた筈だし、それに昨日のお午ごろまで激しい吹き降りだったわね。扉が開いてればお札に雨がかかったと思うけど、そんな跡はないわ。すると、ゆうべ誰かが入れたらしいわね」
川根は答えなかった。タタリという神々の業に人智の推量は余計物だと云わんばかりの思いつめた様子であった。
久雄は夕食のとき、お給仕する由利子からその話をきいた。
「バカバカしい。見せてごらん」
お札を由利子に持参させて眺めていたが、火鉢の火を掻き起して、その中へお札を投げこんだ。厚紙だから燃え上るのに手間がかかって、部屋は煙で目もあけられない程になった。それでも、ようやく焼き捨てた。
「タタリというのは、これだけだ。オレを泣かせやがったよ。オーカミイナリは」
久雄はそれ以上の関心を全く払わなかった。そして、その一夜は無事にすぎた。
翌日の午すぎて、父は酔って帰ってきた。そして、ただちに寝床をしかせて寝てしまったが、一同の夕食がすんだころに目をさまして、酒を命じた。
由利子自身酒肴をととのえてお酌をした。