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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

04 その三 魔教の怪

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,829 字 · 45 页

青空文庫

世良田はキッと身構えて、タイマツのような目をひらいて、

「快天王ノミコト。快天王ノミコト。夜叉払うのミコト。かしこみ。かしこみ。きこしめしたまえ」

これを二度三度唱えて、口と目を同時にピタリと閉じる。するとどこかに小犬のワンワンなく声がして、次に小さな男の子の声で、

「風呂番はいないか。風呂番はいないか。風呂番はでてこい」

声につれて信徒の列から一人の大男か亡者のように蒼ざめ、死刑の絶望のために半ば気を失いながら、脂汗をしたたらせて、よろめいて、いざりでてきた。見ると先の密偵、牛沼雷象である。これを見てガタガタふるえだしたのは泉山虎之介。必死にふるえを止めようとするが、止まらない。

にわかに子供の声はおびえたって、

「こわいよう。ごめんよう。目をくりぬいちゃイヤ。舌をぬいちゃイヤ。焼火バシを目にさしこむのごめんよう。ア、ア、ア」

なんという怖しい子供の断末魔の悲鳴であろう。地獄の責苦をうけているのであろうか。きく者はゾッと身の毛がよだつものすごさ。雷象がアッと気を失いかけると、

「ウォ、ウォッ」ととびかかる狼の声。ギャギャッとたまぎる雷象の悲鳴。大ロウソクの光がパッと消えてしまった。