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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

05 その四 ああ無情

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,336 字 · 47 页

青空文庫

破れるものだ。いかに万全を施しても、一人の智恵は所詮知れたものだよ」

★

虎之介はわが家へ戻らずに花廼屋の玄関先に突ッ立ち、因果先生を玄関口へよびだして、なんにも云えずにニヤリニヤリ笑っている。その薄気味の悪いこと。さすがの花廼屋もあてられて、苦い顔。

「シナ産の黒豚が笑っていると思ったら、二軒隣りの豪傑じゃないか。男女の道で真犯人が解けたかい」

「ハッハッハ。犯人は女だ」

「ブッ。男女の道に見切りをつけたところはお見事」

「貴公の心眼はどうだ。誰知るまいと思いのほか、天の声。実に不正はおのずから破れるてえことを知るまいな」

「知らないねえ。失礼だが犯人は男でげす。クロロホルムと変装。急所はここにありますねえ。薬物に通じて、芝居道に通じたる者。しかも変態にして吸血鬼。ねえ。犯人はただ一人。小山田新作あるのみ」

「ゲゲッ」

と虎之介は腹をシッカとかかえて、断末魔の如くに笑いだした。その日の午後、例の一行をひきつれ、所轄署へ出頭して係りの探偵一同に参集をもとめた新十郎は、犯人のカラクリを静かに説きあかしてきかせた。

「今まで接した犯罪のうちで、この事件ほど巧妙に組み立てられたものはありませんでした。