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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
06 その五 万引家族
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,970 字 · 48 页
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しかし、商店はなれているから、何食わぬ顔、毎度ありがとうございます、と送り返しておいて、月末のツケの中へ、お買い上げ品として万引の品物も書きこんでおく。ちゃんと払って下さるのだから、万引には相違ないが、益々ありがたいオトクイ様でもある。諸方の商店は、浅虫家の未亡人御来店とあればたくさん品々を前に並べ、存分に万引していただくことになっている。
ところが、病癖というものは、遺伝するから怖しい。咲子の良人の正司には姉に当るキク子が、やっぱり万引してくるのである。
キク子は二十五にもなって、まだ独身者という変り種、非常に美人ではあるが、我が強く、陰気で、無口で、てんで男など眼中にないらしい様子である。立居フルマイが荒々しく、投げやりで、奔放だ。そういう変り者であるから、万引の手口が豪放をきわめていて、人力とは思えないほどゴッソリ持ってくる。コートの裏に何十本というカギのついたヒモがぶら下っていて、ここへ反物を何十反もぶら下げてくるような、妙に芸のこまかい技巧派のところもあるのである。母の血をうけて利巧なことは確かであるから、粗雑、奔放のようでも、無口で陰気で考えこんでいるような放心状態のとき、実は万引の手口について新発明をこらしているのかも知れない。