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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

08 その七 石の下

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 32,242 字 · 65 页

青空文庫

こう云われてみれば甚八とても、なつかしさはこみあげてくる。

「もう二十一周忌かねえ。早いものだ。まったく、なつかしいねえ。そうですかい。それじゃア、何をおいても、お供させていただきましょう」

さっそく旅支度をととのえ、二人に案内されて、川越在の千頭家へおもむいた。きいてみれば、村の姿も、建物も昔に変るところがない。変ったのは、人の姿ばかりである。甚八がはじめてここを訪れた時は、彼の頭も人の頭もチョンマゲだった。千代の腕にだかれていた三ツの東太は二十三の男ざかりとなったそうだが、どこにいるのやら挨拶にも出てこないし、姿を見かけたこともない。その代り妙な人間がタクサン住みついている。

千代の弟の地伯がここに住んでいるのは、まだ話が分るが、地伯の細君比良の一族、父の和具志呂足、比良の弟の須曾麻呂、妹、宇礼の父と子三人がそっくり住みついているのである。志呂足は山の神の行者で、病気を治し、悪魔疫病をはらい、吉凶禍福を占う。バカに人の出入りが多いな、と思ったのは理りで、日中は山の神の信者が相当数訪れるのである。津右衛門の先妻の子で、肺病の玉乃、今はもう三十九のウバ桜であるが、どうやら行者志呂足の愛人とも妾ともつかないような関係ができているらしい。