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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
08 その七 石の下
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 32,242 字 · 65 页
「コラ。ハッキリ、本当のことを云え。本当にこんなか」
「ほんとに、そうよ」
千代の驚きは絶大であった。必死の一念とは云え、天鬼はまるで津右衛門の死を見ていたように同じ死の苦悶を再現しているではないか。津右衛門には言葉がなかったが、天鬼にはもどかしさに狂ったような言葉があった。そして張り裂けるような狂気の喚きが、それ自体、まさに死なんとしつつある人の叫喚でなくてなんだろう。まさに天鬼その人の、もがき、のたうつ断末魔の姿であった。
しかし千代は気がついて、ゾッとした。天鬼は憑かれたように津右衛門の断末魔を模倣しつつ、チラと碁盤を指さす瞬間に、実に全部の魂魄を目にこめて指の方向をはかっているのだ。その先に何があるか。彼の全ての精魂がそこにかかっているのである。
兄と父はそれからの二日間、庭園を、庭園の外の山の中をブラブラ歩いていたが、三日目に秩父の自宅へ戻って行った。
★
ちょうどその頃は薩長軍が江戸をさして攻めのぼってきた時であった。山ちかい辺地とても、流言のざわめき、軍靴の恐怖はたちこめている。農民とても、安閑としてはいられない気持であるが、特に金持の豪農は掠奪の恐怖に苦しんだ。