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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
11 その十 冷笑鬼
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,522 字 · 46 页
というのは、左近はそのころ船舶通運を支配するような職にあったが、大阪の船問屋が事故を起して彼の取調べをうけていた。左近はその船問屋を懲罰釈放するに当って、オレの勘当した倅を大阪へ連れて行って、町人にしてしまえ。もうオレの倅ではないから大事にするには及ばんが、自分で働いて食えるように取りはからえ、と放りだしてしまったのである。この倅は大阪へ住んでから幕府が瓦解するまでの十年間は、親の威光があるから遊んで暮して遊里に通じ遊芸を身につけ、維新後は東京へ戻って幇間となり、志道軒ムラクモと号している。
常友の父はムラクモだ。左近の孫である。けれども戸籍の上でも実生活の上でも倉三お清の子供。ところが左近は維新のとき自分の子供たちを処分した際に、倉三お清にも命じて、お前たちのような貧乏人が子供を手もとに、育てゝおくバカはない。奉公に出してしまえ、と命じて、料理屋へ小僧にださせた。
今や左近は七十五。ミネは五十。先妻の子ムラクモはミネと同年の五十。ミネの長男正司は三十。次男月村幸平は二十五。常友が三十であった。
「八九年前のことですが、菓子屋の玉屋が没落しまして正司様が路頭に迷ったことがありましたが、そのとき玉屋の主人が正司様をお連れして旦那様にお詫びを申上げ、せっかく御子息様をお預りしながら店じまいするような面目ないこと