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むかしのことなど

昔のことなど

上村 松園

「国画」1942(昭和17)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,367 字 · 7 页

青空文庫

と気易く許して頂いて、早速写させて頂きました。その絵はその後誰に貸したものか貸し忘れて残っていないのは残念です。

楳嶺先生の一周忌でしたか三周忌でしたか、御苑内で遺作と一緒に弟子孫弟子の作品を並べたことがありまして、そこに出された栖鳳先生の六曲一双「蕭條」は、水墨で枯柳が描かれたものでいいものでした。

その後の先生のお作で覚えていますのは、四回博覧会に出た三尺幅くらいの堅物「松間繊月」、「秋夕」という鴫立沢の西行の絵、芭蕉に連翹などあしらわれた処に鼬の走っている「廃園春色」、樹蔭に大きな牛が寝て居る「緑蔭放牧」、その牛と牧童の部分を私は写さして貰いました。「髑髏舞」もいいものでした。髑髏が極彩色の舞扇を持って踊って居る絵でしたが「この絵は落とされました」と話していられました。

画室の向うの横の方が茶の間になって居て、先生が机に向って調べ物などしていられると、二つか三つくらいだったお園さんがちょこちょことその茶の間から出て来られて、「オ父ちゃん、じっとしとおいや」と櫛で頭の毛を梳かれると先生は「ああこそばいこそばい」と笑っていられるようなことも眼に残っています。