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むかしのおもいで
昔の思い出
宮本 百合子
「文章倶楽部」1926(大正15)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,174 字 · 5 页
何でも題は忘れたけれども、電燈の下で赤ちゃんに添乳していて、急に、この頭の上の電球が破裂して、子供に怪我をさせはしないかと考え出して怯えることを書いた作品は好きで今でも覚えている作である。それで、私は、素木さんが亡くなった時、お葬式にはゆかなかったけれども、その代りに花を贈ったことがあった。
「貧しき人々の群」が書けた時、私は幾分子供らしい無邪気な得意さから、それを自分で両親に読んで聞かせたのであった。それから急に、親達が熱心になって、坪内先生のところへ連れて行ってくれたので、坪内先生にお目にかかったのは、その時が初めてであった。そして、あれが『中央公論』へ載ることになったのである。初めて自分の書いたものが活字になった時の嬉しさは、未だ子供でもあったし、一寸言葉に現せない程であった。それに、書いたものから、お金が貰えることなどは少しも知らなかったので、今から思えば、ほんの一枚一円にも当らないような原稿料ではあったが、とにかく、生れて初めて自分にとったお金を持ったので、ひどく得意になって、家中の人達に色々なものを買って上げたのであった。その時、父には大変上等な襟巻きを、母には手提げか何かで、後は兄弟達の一人一人から、女中にまで振まって、おしまいに、自分の欲しいものを買おうと思った時には、お金がすっかり失くなっ