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むかしのかじ

昔の火事

宮本 百合子

「改造」1940(昭和15)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,494 字 · 21 页

青空文庫

共にわかとうとする笑い顔で、こんなに完全な形で竈がのこっていることは珍しいんです、と額の汗をシャツの腕で気持よさそうに拭きながら云った。ここに、ホラ、底のぬけた甕がさかさにしておいてあるでしょう。これは竈で炊事するとき甕の台につかったものですね。こんな時代にも、やっぱり廃物利用をしたんですね、と笑った。竈の前の踏みかためられた赭土のところを手で払うようにして調べて、井上は、ある、ある、ね、と中学生に示した。これが籾と藁の圧痕ですよ。この竪穴の時代にもう農作がされていたんですね。沢の方に水稲をつくっていたのかもしれない。

尻っぱしょりになって跼みこんでそこの地点をのぞいていた猛之介の心には、一種の失望とともに侮蔑に近い感情が湧いた。なーんのことだ。大昔の百姓の穴小屋をほじくりかえしているのか。そんなら、大したものは出っこない。今だって東北のひどいところへ行けば、土間に藁をしていて寝ているという話だ。そんなところから、金めな代物なんぞ出ようもないことは知れきっている。猛之介は穴から外へ出ながら、どれもあらかた同じようなものですかな、と云った。剣だの何だのというものは、ここいらからは出ないかな。