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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

やはり園が一番いい。すべての点において抵抗力が最も少ない。よかろう……人見は自分の部屋を出て、隣りの部屋のドアに手をかけた。また生欠伸が出た。

「園君いる?」

「ああ、はいりたまえ」

すぐこういう返事が小さく響いたが、机に向いたままでいっているらしく、声がゆがんで聞こえてきた。勉強をしているなとおもいながら、人見はそっと戸を開いた。

きちんと整頓した広い部屋の一隅に小さな机があって、ホヤの綺麗に掃除された置ラムプの光の下で、園ははたして落ち着いて書見していた。戸外では雨も雪もまじえない風がもの凄く吹きすさんでいたが、この部屋はしんみりとなごいていた。人見は音のしないように戸をたてると、静かに机の方によっていった。やがて園ははじめて顔を挙げて人見を見かえった。光に背いて暗らくはあったけれどもその顔には格別不快らしい色は見えないようにみえた。そして「ひどい風になったねえ」といいながら、静かに座を立って、座蒲団の上に敷きそえていた、毛布の畳んだのを火鉢の向うにおきなおした。人見はちょっと遠慮するような恰好でそれに坐った、それは園の体温でちょうどよく暖たまっていた。