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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

徂徠が野にいたのも、白石が官儒として立ったのも、たんなる表面観察では誤りに陥りやすいことを論定したかった。この事業は清逸にとってはたんなる遊戯ではなかった。彼はこの論文において彼自身を主張しようとするのだ。これは西山、および西山一派の青年に対する挑戦のようなものだった。

白石文集、ことに「折焚く柴の記」からの綿密な書きぬきを対照しながら、清逸はほとんど寒さも忘れはてて筆を走らせた。彼はあらゆる熱情を胸の奥深く葬ってしまって、氷のように冷かな正確な論理によって、自分の主張を事実によって裏書きしようとした。ややもすれば筆の先に迸りでようとする感激を、しいて呑みくだすように押えつけた。彼のペンは容易にはかどらなかった。

アイヌと、熊と、樺戸監獄の脱獄囚との隠れ家だとされているこの千歳の山の中から、一個の榴弾を中央の学界に送るのだ。そしてそれは同時に清逸自身の存在を明瞭にし、それが縁になって、東京に遊学すべき手蔓を見出されないとも限らない。清逸は少し疲れてきた頭を休めて、手を火鉢に暖ためながらこう思った。そして何事も知らぬげに眠っている純次の寝顔を、つくづくと見守った。