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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

、園の心は涼しくひき締った。そして熱いものを眼の中に感ずることさえあった。

夢中になってシラーの詩に読み耽っていた園は、思いもよらぬ不安に襲われて詩集から眼を放して機械を見つめた。今まで安らかに単調に秒を刻んでいた歯車は、きゅうに気息苦しそうにきしみ始めていた。と思う間もなく突然暗い物隅から細長い鉄製らしい棒が走りでて、眼の前の鐘を発矢と打った。狭い機械室の中は響だけになった。園の身体は強い細かい空気の震動で四方から押さえつけられた。また打つ……また打つ……ちょうど十一。十一を打ちきるとあとにはまた歯車のきしむ音がしばらく続いて、それから元どおりな規則正しい音に還った。

あまりの厳粛さに園はしばらく茫然としていた。明治三十三年五月四日の午前十一時、――その時間は永劫の前にもなければ永劫の後にもない――が現われながら消えていく……園は時間というものをこれほどまじまじと見つめたことはなかった。

心から後悔して園は詩集を伏せてしまった。この学校に学ぶようになってからも、園には別れがたい文学への憧憬があった。捨てよう捨てようと思いながら、今までずるずるとそれに引きずられていた。