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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

それを知らせたいために、十分の好意をもって、かすかに微笑んだ。

すると渡瀬さんは途轍もなく、

「失礼、あなたはいくつになりますね」

と尋ねた。素直に十九だと答えると感心したように、

「ふーむ、珍らしいな、奇体だなあ」

と嘆息するようにいいながら、今度は渡瀬さんがしげしげとおぬいの顔を見た。おぬいは軽い羞恥と、さらにかすかな恐れをも感ぜずにはいられなかった。けれどもその場合、恥かしがることも恐れることも少しもないはずだと思うと、すぐに不断のとおりの気持に帰ることができて、

「それでは始めていただきます」

といいながら、書物を机の真中の方に持っていった。渡瀬さんもそのつもりらしく、上体を机の上に乗りだした。

おぬいは何もかも忘れて、懸命にこの前教えられたところを復習した。第四読本は少し力にあまるのだけれども、書いてあることが第三読本よりはるかに身があるので、読むには励みがあった。アーヴィングという人の「悲恋」(Broken Heart)という条りだった。星野さんがこの書物を始める時、目次によって内容をあらかた話してくれた時、この章に書いてあるのは、アイルランドのある若い勇ましい愛国者と、その婚約の娘との間に起った実際の出来事だといったので、おぬいにはよけい興味のあるものだった。