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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

その時の苦しさを思うとどうしても今までどおりにしているほかはない……といって、私はきっといつかは敗けてしまうに決っている……たとえ、見棄てられても、一度だけでも……おせいは切羽つまった気持の中で、悲しい嬉しい瞬間を心に描いた。それがせめてもの腹いせだった。……そして死んでしまえばそれでいいんじゃないか……

「お父さんはたってと勧めるんじゃない……が、お前はどうしても気が向かないというのだな……」

おせいはびくりとして夢のようなところから没義道にひきもどされた。彼女はいつの間にかハンケチを眼にあてていた。

「まあお父さんの胸の中もひととおり聞いてくれ。俺も五十二になる。昔なら殿様に隠居を願いでて楽にくつろぐ時分だが、時世とはいい条……また、清逸の奴がどういうつもりなのか、あの年になっていて、見さかいのなさ加減はない。このごろもお前、家にいて、毎日の家の様子は見ているくせに、箒一つ取るでもなく、家いっぱいにひろがって横着をきめている始末だ。学問ができるのなんのって人がちやほやするのを真に受けてしまってからに、有頂天になっている。あんな病気を背負いこんで薬代だけでもなみたいていでないのに、東京へ出かけようといってさらに聞かんのだ。