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せいざ
星座
有島 武郎
1922(大正11)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页
『折焚く柴の記と新井白石』はかろうじて稿を了るに近し。試験を終らば兄は帰省せん。もししからば幸いに稿を携え去って、四宮霜嶺先生に示すの機会を求むるの労を惜しまざれ。先生にして我が平生忖度するところのごとくんば、この稿によって一点霊犀の相通ずるあるを認めん。我が東上の好機もまたこれによって光明を見るに至らんやも保しがたし。さらに兄に依嘱しえべくんば、我が小妹のために一顧を惜しまざれ。彼女は我が一家の犠羊なり。兄の知れるごとく今小樽にありてつぶさに辛酸を嘗めつつあり。もしさらに一二年を放置せば、心身ともに萎靡し終らんとす。坐視するに忍びざるものあり。幸いにして東京に良家のあるありて、彼女のために適所を供さば、たんに心身の更生を僥倖しうるのみならず、その生得の才能を発揮するの機縁に遇いうるやも計るべからず。我が望むところは、彼女が東上して円山氏につき、勤労に服するのかたわら、現代的智識の一班に通ずるを得ば、きわめて幸いなり」
園はこれだけのことを読む間にも、幾度も自家の方のありさまを想像していた。想像したというよりは自分がずっと育ってきた東京郊外の田舎じみた景色や、父、母、兄などの面影やが、見るように現われたり隠れたりしていた。