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せいざ
星座
有島 武郎
1922(大正11)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页
しかしそう決心すると同時に、園は心臓がきゅうに激しく打ちだして、顔が火照るまでに慌ただしい心持になっていた。彼はそれをいまいましく思いながらもすぐ立ち上って部屋の中を片づけはじめた。しかしそこには別に片づけるというようなものもなかった。ズック製の旅鞄に、二枚の着換えを入れて、四冊の書物と日記帳とを加えて、手拭の類を収めると、そのほかにすることといっては、鍵のかかるところに鍵をかって、本箱の上に自分のと別にしてならべてある借用の書物を人見か柿江に頼んで返却してもらえばそれでいいのだった。彼は心の中にわくわくするようないやな気分を持ちながらも、割合に落ち着いた挙止でそれだけの仕事をすませた。そして机の上にあった三通の手紙を洋服の内衣嚢に大事にしまいこんだ。机の上にはラムプとインキ壷と硯箱とのほかに何んにもなかった。そこで園はもう一度思い落しはないかと考えてみた。欠席届があった。彼はふたたび机の引出の錠を開けて、半紙を取りだしてそれを書いた。そしてそのついでに星野にあてて一枚の葉書を書いた。
「兄の手紙今夕落手。同時に父死去の電報を受取ったので今夜発ちます。