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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

それもしかし彼にとってゆめゆめ不快なことではなかった。

おぬいさんは立ってラムプに灯をともした。おぬいさんは生まれ代ったようになった……すべての点において。部屋の中も著しく変った。おそらく夜の灯の下で変らないのはその場合園一人であったに違いない。

藍がかってさえ見える黒い瞳は素ばしこく上下に動いて行から行へ移ってゆく。そしてその瞳の働きに応ずるように、「まあ」というかすかな驚きの声が唇の後ろで時々破裂した。半分ほど読み進んだころおぬいさんはしっかりと顔を持ち上げてその代りに胸を落した。

「星野さんは明日お家にお帰りなさるそうですのね」

「そういっていました」

園もまともにおぬいさんを見やりながら。

「だいじょうぶでしょうか」

「僕も心配に思っています」

この時園とおぬいさんとは生れて始めてのように深々と顔を見合わせた。二人は明かに一人の不幸な友の身の上を案じ合っているのを同情し合った。園はおぬいさんの顔に、そのほかのものを読むことができなかったが、おぬいさんには園がどう映ったろうか。と不埒にも園の心があらぬ方に動きかけた時は、おぬいさんの眼はふたたび手紙の方へ向けられていた。