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せいざ
星座
有島 武郎
1922(大正11)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页
どうしてもそうさせなかった。
園は静かに茶を啜り終った。星野の手紙をおぬいさんの方に押しやった。古ぼけた黒い毛繻子の風呂敷に包んだ書物を取り上げた。もう何んにもすることはなかった。座を立った。
暗い夜道を急ぎ足で歩きながら園は地面を見つめてしきりに右手を力強く振りおろした。
きゅうに遠くの方で急雨のような音がした。それがみるみる高い音をたてて近づいてきた。と思う間もなく園の周囲には霰が篠つくように降りそそいだ。それがまた見る間に遠ざかっていって、かすかな音ばかりになった。
第二陣、第三陣が間をおいて襲ってきた。
大通りまで来て園は突然足をとどめた。おぬいさんの家から遠ざかるにしたがって、小刻みに震う前髪がだんだんはっきりと眼につきだして、とうとうそのまま歩きつづけてはいられなくなったからだ。星野の行ってしまうということだけであの感じやすい心は十分に痛んでいるのだった。それは十分に察していた。察していながら、自分は断りをいうにしても断りのいいようもあろうに、あんな最後の言葉を吐いてしまったのだ。けれどもあんな最後の言葉を吐かせたのは誰の罪だろう。たんに英語を園に教えろといった星野にその罪はない。