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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

その時の顔だ。

西山はそれを感ずると妙に感傷的にさせられていた。

「労働者になるつもりでいればどうにかなるだろう」

もう一度長い沈黙が来た。

「貴様は夢を見ているんじゃあるまいな」

と渡瀬がついに本気になって口を開き始めた。

「今日の演説を聞きながらもそう思ったんだが、社会運動なんてことは実際をいうと、余裕のある人間がすることじゃないかな。ブルジョア気分のものじゃないかな。俺なんかはそんなことは考えもしないがなあ。学問だって俺ゃ勘定ずくでしているんだ。むりでも何んでも大学程度の学問だけはしておかないと、これからはうそだと思うもんだから俺はこうやっているんで、学問の尊厳なんて、そんなものがあるもんかい。それは余裕のある手合いがいうことだ。照り降りなしに一生涯家族まで養おうというにはこれが一番元資のかからない近道なんだ。俺にはそれ以上を考える余裕はないよ。俺と同じ境遇の人間を救ってやるの、来るべき時代をどうするのというような余裕は俺には正直なところ出てこないよ。……貴様このカアライルにでもかぶれているととんだ間違いになるぜ。貴様の考えはばかに平民的だが、考え方……考えじゃない、考え方だ……その考え方にどこかブルジョア臭いところがあるんじゃないかなあ」