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せいざ
星座
有島 武郎
1922(大正11)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页
吉田というのは、まだ若くって頭のいい人だったが、北海道というような処に赴任させられたのが不満であるらしく、ややともすると肝心な授業を捨てておいて、旧藩主の奥御殿に起ったという怪談めいた話などをして、学生を笑わせている人だった。そうした人に対しても、園は異名を用いて噂することなどは絶えてしなかった。
「ほんとに困る。しかしどうせ何んでも自分でやらないじゃならない学校だからかまわないといえばかまわないことだが……今日は少しはいいの」
澄んで底力のある声が、清逸の眼にだんだん明瞭な姿を取ってゆく園の方から静かに響いた。健康を尋ねられると清逸はいつでも不思議にいらだった。それに答える代りに、何んとなくいい渋っていた肝心の用事を切りだすほかはなくなった。清逸は首をもたげ加減にして、机の方に眼をやった。そしてその引き出しの中にある手紙を出してくれと頼んでしまった。
園はすぐ机の方に手を延ばして、引き出しを開けにかかった。その時清逸は、自分の瞳が光って、園の方にある鋭い注意を投げているのを気づかずにはいられなかった。園が手紙を取りだした時、星野とだけ書いてある封筒の裏が上になっていたので、名宛人が誰であるかはもとより判りようはずがないのに、園の顔にはふとある混乱が浮んだようにも思え、少しもそんなことがないようにも清逸に