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えいがとみんぞくせい
映画と民族性
伊丹 万作
「映画評論」1944(昭和19)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,175 字 · 11 页
しかし、かくして互にどろの投げ合いをすればお互がどろまみれになるばかりでついに得るところはない。
日本映画の進出に関する方策については今までにおびただしい議論がくり返されたが、私の見るところではだいたいにおいてそれを二つの傾向にわかつことができる。すなわち一つは特別にいわゆる外地向きの映画を企画製作すべしという意見。他の一つは、ことさらに外地向きなどということを顧慮せず、優秀なる映画さえ製作すれば、進出は期して待つべしとなす議論である。こまかく拾つて行けばなおこのほかにもいくばくかの意見があるであろうが、方針の根幹はおよそ右の二途に尽きるようである。
順によつてまず最初に外地向き映画特製論を検討してみるが、ここでまず問題になるのはいわゆる外地向きとはいかなる謂かということである。論者は簡単にいう。すなわち取材の範囲を拡張せよと。またいう。雄大なる構想を練れと。もちろんいずれも結構なる議論である。私にはこれらの意見に反対するいささかの理由もない。それらは当然なさねばならぬことであるし、またできるときがあると思う。しかしながら、それは今日いつて今日できることではないのである。