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はる
春
宮本 百合子
「ウーマンカレント」1925(大正14)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,512 字 · 8 页
……思いかえしたように、また元の菊の葉かげ、一輪咲き出した白沈丁花の枝にとまって、首を傾け、黒い瞳で青空を瞰る。次第に強い憧れや歓喜が迫って来るらしい。自然の輝きある朝の緑、幹の色、土の色の裡で、文鳥は本当に活きている小鳥のように見えた。
「つかまえられて?」
私は、外景に於て見る文鳥の美しさにまけ、捕まらなくてもよいと感じる。つかまっては淋しいようにさえ思う。
「――妙なものね、鳥はやっぱり樹や草と一緒に見る方がずっと立派ね、まるで色が引立つじゃあないの、ずっと綺麗ね」
この一対は二月、私の誕生日に、友達である彼女が雨の降る中、買って来てくれたものだ。そう思えばこのまま放してしまうのは、また違った意味で寂しい。彼女が、さっきからああやって立ったまま根気よく、恐らく決して無い文鳥の万ガ一の気まぐれを待っているのも同じ原因からだろう。
「とんだことを仕たわね、さっき粟をふくときどうしたのか、口を閉めなかった。帰るかしら?」
「さあ……多分だめよ」
「とんだことをしてしまった」
彼女の心持を理解し、私は云った。
「逃げる気もなく、翔んだら広いところに出てしまったというわけね。