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はるになるぜんや

春になる前夜

小川 未明

「東京日日新聞」1922(大正11)年1月7日~10日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,856 字 · 8 页

青空文庫

木の枝に止まって、すべてのことを知りつくしていたすずめは、悲しくて悲しくて、たまらなくなって、熱い涙が目からあふれて出ました。しかし、そのときの寒さというものは一通りでなくて、目から出た涙は、すぐに凍って両方の目はふさがってしまいました。すずめは足をあげて目をぬぐおうとしましたが、このときは、はや両方の足が枝の上に縛りつけられたように、凍りついて離れませんでした。

すずめは、つくづく寒気というものを情けなしな、冷酷なものだと思いました。月も、星も、また雪までも、ああして感心して哀れな歌をきき、音楽に耳を澄ましているのに、寒気だけが用捨なく募ることを、すずめは腹だたしくも、またかぎりないうらめしいことにも思ったのです。

そのうちに、どうしたことか、歌の声も、音楽のしらべも、だんだん小さく、低く、遠のいてゆくのを感じました。けれど、すずめは、ついに明くる日の朝まで身動きもできず、目を開けることもかなわず、鋳物のように木の枝に止まっていました。

太陽が照らしたときに、すずめは、はじめてあたりのようすを知ることができたのです。

「昨夜のことは、みんな夢ではなかったか、あの人たちは、どうなったのだろう?」