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チュンタオ
春桃
宮本 百合子
「近代文学」2、3号、1946(昭和21)年2、4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,868 字 · 22 页
「あんたが片輪だからって、にべない仕打ちは私に出来ない。ただわたしは、あの人をすてかねるんだよ。みんな一緒に暮して、誰が誰を食わしてやってるなんて考えないことにしたら、いいじゃありませんか?」
李茂と向高とは、春桃と三人で暮しはじめた。向高は、少し本をよんだので「先に小人、後に君子」の道理をのみこめたし、生存の利害はきっちり春桃に結ばれていたし、嫉妬してはならないと云ったから、彼はその種子さえも踏みにじってしまった。李茂にしても、春桃のところから出てほかのどこへ行きたかろう。李茂は、家の内にいて、切手や紙のよりわけが上手になって行った。
けれども二人の男と一人の女とが、一つ※(「火+亢」、第4水準2-79-62)の上に寝るのは、どうもあまり便利ではなかった。二人の男の間に、微妙な不安があった。二人は、春桃をゆずり合い、幾度も字のかける向高は「赤い書付」をかいた。春桃は、何度もそれをやぶいた。そういうおだやかだが、こころにかかるいきさつのうちに或る夕方、向高の姿が見えなくなった。その姿をさがしても見当らず、がっかりして帰って来た春桃が見つけたのは、窓の子に自分の体をつり下げている李茂であった。