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しゅんすいとさんば
春水と三馬
桑木 厳翼
「図書」岩波書店、1939(昭和14)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,059 字 · 9 页
斯くして此息子も改心したので父親は喜んで帰る。それで謝金を請求すると、父親一心は貧窮なのを口実に立帰る。そこで
巧案忙然てあの親仁めは儕が上をゆく奴ぢや大方あの豆板も喰せ物であらうと包紙の封を切て見て扨こそ鉛ぢや
斯様な話を集めたもので文章も整わぬ所があり、教訓も皆平凡、然も全然真面目に書いて居るのでもない。大体の印象から見れば心学の道話と類似した所があるが、多少之を滑稽化した趣もある。謂わば心学のパロディーにも相当するものであろうか。著者は心学を今一層通俗化しようとしたのか、或は心学の平凡な道徳談を諷刺しようとしたのか、其点は明でないが、とにかく形式の上からは幾分パロディー的であることを掩われない。然し其中の教訓は必しも民衆教化に適せぬとは言えない。
此智恵鏨を読みながら、私は十八世紀の啓蒙家カンペの修養書「テオフロン」の事を想出したが、之に就ては嘗て書いたこともあり、又紙数も尽きたから今は触れない事にして、ただ所蔵書の吹聴をすることに止めて置く。そして以上二書の間には何の聯絡もないが、春水は三馬に私淑したというから、先ず此に僅かの繁りを認め得るとして置こう。