轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しゅんもう

春盲

豊島 与志雄

「人間」1951(昭和26)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,296 字 · 17 页

青空文庫

唇に清冽な感じが来た。正子はしばしじっとしていたが、首をすくめて笑い、絵本をかかえて逃げていった。

「ばかね。ばか……。」

美津子が睥むまねをして、山田の手首をきゅっと抓った。

「あんな熱心なキス、初めて見たわ。わたしの額にも、さあ、してごらんなさい。」

そして彼女はまた、彼の手首をきゅっと抓った。

嫉妬でも非難でもない証拠には、彼女は笑っていた。だから、山田も忘れていたのだ。然し手首には、紫色の斑点が二つ残った。

それも、数日でなおってしまったが、美津子の室の天井裏の音は、風の吹き工合によって、いつでも起った。

その音に怪しいことはないとしても、美津子自身、だんだん痩せ窶れてゆくがようだった。額の小皺に汗をにじませてることがあり、夜は寝汗をかくことがあると打ち明けた。

「医者に診てもらいなさいよ。」

「大丈夫……。気候のせいでしょう。」

「それとも、天井裏の怪しい音のせいかも知れない。」

その怪しい音ばかりでなく、山田はほかの物音にも、気を惹かれていた。それは、美津子のところにいる時よりも、自宅にいる時のことが多かった。

夜陰深更、時として、表の街路に、馬蹄の音が聞えた。