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しょうわのじゅうよねんかん

昭和の十四年間

宮本 百合子

「日本文学入門」日本評論社、1940(昭和15)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,356 字 · 69 页

青空文庫

で鉱山の生活を描こうとした間宮茂輔等があった。農村を題材として和田、伊藤の作家が活動し始めたには、前年からの社会的題材への要望、作品の世界の多様化の欲求が一つの動機をなしていたのであろうが、それらの作品が好評を博したことは、当時の官民協力の気風と結びつき銃後の農村の重要性を文学も反映させなければならないという立前と結合して、官製の農民文学懇話会結成の気運を齎した。その懇話会賞も制定され、その名の叢書も刊行され、それらの小説集の表紙には時の農林大臣有馬頼寧の写真が帯封の装飾として使われるという前例のない有様を呈した。

近代及び現代の日本文学の中で、農民文学の占めて来た位置とその消長の跡とは、日本の社会と文化の成立の歴史と照しあわせてさまざまの感想を惹きおこす問題だと思う。日本が農業国であって、その独特な条件の上に明治の新文化が開花させられたのであるが、文学に於いては、長塚節の「土」を一つの典型とするのみで、土の文学を唱道する作家たちの活動や大正年代に吉江喬松・中村星湖・犬田卯等によってつくられた農民文学会の活動などが、特にめざましい文学上の収穫を齎して来ていないことは、注目すべきことである。