轻松读懂日语经典作品
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とき ところ ひと
時 処 人
岸田 国士
――年頭雑感――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,739 字 · 10 页
家が今の信濃町の近所にあつて、学校から帰ると、津の守坂の横にある「乳屋の原」というのへ遊びにいつた。
その原には、古池があつて、まわりに枯草が生い茂り、あぶなつかしいブランコが、子供の乗るのにまかせてあつた。
乳牛が、たまに草を食つている。
原つぱの隅に、破れた生垣を距ててボロ家が一軒、何をする家かはつきりは誰も知らない。ただ下手な三味線がそのへんから聞えて来た。
ま新しい日の丸の旗が、門口に立ててある。この印象は、ちようどその頃、日清戦争が終つたのだということと関係がありそうだ。
そうそう、そのブランコで怪我をした傷痕が、まだ私の額に残つている。その時、そばで紙風船をついていたおなじ年頃の少女が、いきなりついていた紙風船で私の額をおさえ、流れ出る多量の血を気にしながら、私の家まで送つてくれた。
その少女のことを、私は「染物屋のチャーちやん」とだけしか覚えていない。
元日が元日らしいためには、どんな条件が必要かといえば、門松・トソ・雑煮というような形式はさておき、私の経験によれば、まず何よりも、家族が多少改まつて勢ぞろいをするということである。